1.画像所見が得られにくい
交通事故後に、高次脳機能障害の症状が出た場合、画像所見があるかどうかは、立証のための大きなポイントです。しかし、困ったことに、高次脳機能障害の場合、画像に異常が映らない場合があるのです。
頭部が打撃を受けると、頭がい骨内で脳がゆがみます。脳がゆがむことによって、脳内のいたるところで、脳内に張り巡らされた神経線維がブチブチと切れてしまいます。びまん性軸索損傷という状態です。
頭部外傷で病院に緊急搬送されると、まずはCT撮影がなされます。CTは、脳内の大きな出血を確認するのに便利です。脳挫傷や硬膜下血種では、血管が破損し出血していますから、CTでハッキリわかります。ところが、脳内の神経線維がブチブチと切れる「びまん性軸索損傷」の場合には、CTに映らないことがあります。脳内の神経線維には、血液が通っていませんので、切れても出血をしないからです。そうなると、CTにも映りません。
2.事故直後にされるのはMRIよりもCTの撮影
脳内の一部には、毛細血管が通っているので、脳がゆがむと毛細血管が壊れ、脳内に小さな点状の出血がポツポツと出現することがあります。
神経線維の断裂そのものを直接確認することはできなくても、脳内の点状の出血を確認することで、脳にゆがみが発生し脳内の神経も毛細血管同様に切れたことを推定できるわけです。しかし、こういった点状の出血は、CTでは確認しづらいのです。CTよりもMRIの方が確認をしやすいのです。
ところが、事故直後、多くの病院ではCTの撮影はしますが、MRIの撮影をすることは少ないです。脳内の大きな出血の有無を確認するにはCTが最も適しています。緊急の状態では、まずはCTを使って脳内の大きな出血を管理して救命することや脳へのダメージを最小限にすることが最優先で、後遺障害等級獲得のための証拠を保全することは後回しになります。
脳内の点状の出血は、脳内で吸収され、早ければ1週間程度で確認がしづらくなっていきます。そのため、あとからMRIを撮っても、映らないことが多いです。その結果、「画像所見」がないとされ、びまん性軸索損傷による高次脳機能障害の証明に支障をきたすことになります。
3.拡散テンソルやSPECT検査、PET検査
医療現場では、びまん性軸索損傷かどうかを確認するために、拡散テンソルによって神経線維のつながりを調べたり、SPECT検査、PET検査で脳の血流や代謝を調べます。この方法なら、事故から日数がだいぶ経過した後でも、異常が観察できる場合があります。
ただ、後遺障害等級認定の実務では、拡散テンソルやSPECT検査、PET検査についての扱いは軽く、それのみで高次脳機能障害を確定できないとされています。
医療現場であまり使われない早期のMRI撮影を後遺障害等級認定の実務では要求し、医療現場で使われる拡散テンソルやSPECT等の検査を後遺障害等級認定の実務では軽視しているのです。
ふざけていると文句の一つもいいたくなるところですが、治療を目的とする医療現場と、賠償するに値するほどの後遺障害があったのかを認定することが目的の後遺障害等級認定実務では、おのずと同じ検査に対する評価も変わってくるのです。
4.ではどうするのか
事故直後の脳の画像と事故から数か月経過した脳の画像を比較し、脳室が拡大しているかどうかを見ます。
また、MRIの撮影方法の一つ、T2スターを使えば、ある程度時間が経過した後も、脳内の点状出血の痕を確認できる場合があるとされています。
脳室拡大やT2スターについては別記事でご紹介します。
下記の記事もご覧ください。
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