1.性格・人格の変化は後遺障害である
交通事故により高次脳機能障害による代表的な症状として、知的障害とならび、性格や人格の変化があります。具体的には、人が変わったように、怒りっぽくなったり、無責任になります。
性格・人格の変化が後遺症だと思われにくいのは、性格や人格はその人の「個性」にすぎないと考えられがちであるということです。
通常、交通事故の障害と言えば、肉体の一部を失ったり、肉体そのものはすべて残存してもその機能を損なう等、「引き算」による「喪失」をイメージします。しかし、「怒りっぽい」とか、「無責任、お調子者」になったというのは、「個性の変化」ではあっても、「引き算」による「喪失」であるとは言いにくく、交通事故の後遺障害であると気がつかれない場合があります。しかし、実はこういった性格の変化も「引き算」による「喪失」と考えることができます。脳の「感情をコントロールする機能」が失われたと考えることができるからです。
2.気付かれにくい性格・人格の変化
こういった障害は、言語障害や麻痺などと違って、気付かれにくいのです。
例えば、働き者だった人が事故に遭ってから休業補償を受けながら数か入院し、退院後に働く意欲が無くなり、浪費をするようになったような場合、どうでしょうか。
ひどい場合には、障害であることを理解してもらえるどころか、「入院してお金が入ってから人が変わってしまった。」「怠けることをおぼえてしまった。」などと非難されてしまうこともありうるのではないでしょうか。しかし、実際には、交通事故によって引き起こされた高次脳機能障害の症状かもしれないのです。
数十年前は、高次脳機能障害の存在について医療関係者にすら、あまり知られていませんでした。したがって、「交通事故で賠償金が入ってから、酒におぼれるようになった。家族にも暴力をふるうし、仕事も転々として長続きしない。」などと言われていた人たちの中にも、実は高次脳機能障害が残っていたという人たちが相当数いたことでしょう。
3.性格・人格の変化は知的障害よりも深刻
性格・人格が変化してしまうと、知的障害もなく、身体の機能にも全く問題がない場合であっても、社会復帰は難しくなります。他の障害であれば、症状の程度にあわせ、周囲からの支援を受けながら就業していくことも可能ですが、性格や人格の変化が著しいと、職場の同僚や支援者との間でもトラブルを起こしてしまい、被害者本人も周囲の人も疲労困憊してしまうからです。
4.高次脳機能障害であるかどうかの確認
交通事故の際に頭部に衝撃があり、交通事故に遭う前と性格・人格が大きく変わってしまっているようであれば、高次脳機能障害ではないかを疑います。
病院からカルテや看護記録の開示を受けて脳外傷の所見や受傷後の意識障害の有無を確認します。事故直後に撮影されるCTに脳挫傷などがはっきり写っていることもありますし、後からMRIを撮った場合でも、受傷痕(脳に残った傷)の存在がわかることがあります。
事故の後に、一定の期間意識を失っていたり、意識の混乱がみられたような場合には、高次脳機能障害が残っている可能性があります。
カルテなどに、「軽度意識障害」などと言った言葉だけではなく、例えば、「E4 V4 M6」とか、「Ⅰ-2」といった意識障害を示す指標が書かれていたりします。
性格や人格の変化が生じた場合には、知能障害も一緒に生じている場合も多いので、主治医に相談し、「ウェクスラー式知能検査」などの知能テストを受けることを検討します。
事故前と事故後の生活状況の変化については、家族や介護者に「日常生活状況報告」を作成してもらいます。
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