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意識障害が継続していないと高次脳機能障害とは認められないのか

1.高次脳機能障害の意識障害

実務上、交通事故の後遺障害としての高次脳機能障害が認められるためには、頭部外傷後の「意識障害の継続」が必要と言われています。

もう少し具体的に言うと、「半昏睡ないし昏睡で開眼・応答しない状態」が6時間以上、もしくは「健忘症あるいは軽度意識障害」が1週間以上継続することが要件となっています。

2.「意識障害の継続」の重要性

「意識障害の継続」は、画像所見よりも重要とも言われています。MRIなどの画像所見が認められない場合でも高次脳機能障害が認められることはありますが、画像所見があっても意識障害が存在しない場合には高次脳機能障害が後遺障害として認められないと解説している文献もあります。

また、同様の見解から、画像所見があるにもかかわらず意識障害がないことを理由に高次脳機能障害の存在を否定した裁判例もあります。

「意識障害の継続」の要件が絶対に必要であるとまではいいませんが、「意識障害の継続」の存在が証明できた方がずっと高次脳機能障害が認められやすくなることは確かです。

高次脳機能障害について後遺障害等級の認定を受けるためには、医師によって、「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書類を作成してもらうことになります。

頭部を受傷した場合、通常、救急搬送の際にも、搬送先の医療機関でも、患者に意識障害が発生していないかどうかについて注意を払われ、、しっかりと意識レベルの管理が行われます。したがって、意識障害があったかどうかについての記録はカルテなどにしっかりと残っている場合が多いでしょう。カルテ以外にも、看護記録などに記載されている場合もあります。

 

3.病院が気がつかない場合もある

ただ、意識障害の程度が軽かったり、健忘に収まっている程度の場合には、医療機関によるチェックでは気づかれないこともありえます。そうした軽度の意識障害については、家族などの付添人との会話の中で、「言っていることが変だ」とか「今、その話をしたばかりだよね。覚えてないの?」などと、初めておかしいと気がつくこともあるでしょう。したがって、事故後は、できるかぎり家族の方、身近な方が被害者に付き添い、様子を記録に残しておきましょう。話のつじつまが合わない様子、「日時、時間、場所」についての見当がつかない様子、自分の名前、職業、生年月日、住所などを言えないといった様子、ほんの少し前の話が記憶から飛んでいるような様子などがあれば、すべて記録しておくべきです。できれば、毎日、様子を確認し、被害者の病状が心配なので確認をして欲しい旨、看護師にも医師にも伝えましょう。

なお、被害者の様子を記録する際には作為や解釈を入れずに具体的な細部までありのままに記録することが最も説得力があると考えています。最終的には裁判官の判断になりますが、裁判官は、「実際に体験していなければとても思いつかないような具体的な細部」を重視する傾向があります。

「健忘・軽度の意識障害」が1週間継続していることが記録に残れば、「意識障害の要件」はクリアできるのです。

4.JCSとGCS

被害者が「半昏睡ないし昏睡で開眼・応答しない状態」や「健忘症あるいは軽度意識障害」という状態にあるかどうかを判断するために、JCSとGCSという基準が用いられています。JCSはジャパン・コーマ・スケール、GCSはグラスゴー・コーマ・スケールの略で、いずれも意識レベルを評価するための指標です。

JCS

詳細は割愛しますが、JCSは0(ゼロ)から300までの数字で表現します。数字や桁数が増えれば増えるほど、意識障害の程度が重くなります。

ざっくりいうと、

0(ゼロ)の場合は意識障害がない正常な状態(意識清明)

1桁の場合は健忘・軽度意識障害

2桁~3桁の場合は半昏睡・昏睡

です。

GCS

一方、GCSは、ざっくりいうと、15点満点で採点します。点数が低ければ低いほど、意識障害の程度が重くなります。

15点の場合は意識障害がない正常な状態(意識清明)

13~14点の場合は健忘・軽度意識障害

12点以下の場合は半昏睡あるいは昏睡

です。

5.意識障害の継続は絶対に必要か(実例)
以上、「意識障害の継続」の要件の重要性について述べましたが、「意識障害の継続」の要件が完全でない場合でも、高次脳機能障害が認められる可能性はあります。
 
私が担当したケースをお話しします。
交通事故の直後、軽度の意識障害とされ、GCSが「14点」だった方がいましたが、事故からわずか4日後には意識清明とされ、GCSが「15点」に回復しました。
高次脳機能障害が認められるためには軽度の意識障害(GCSでいえば14点以下)が1週間以上継続することが必要となっているにもかかわらず、「頭部外傷後の意識障害についての所見」では、数日後には意識が清明に戻っています。したがって、健忘症あるいは軽度意識障害が1週間以上」という基準をクリアできていませんでした。
 
しかし、結果的に、この方は自賠責の手続で高次脳機能障害が認められました。その後、裁判でも争いましたが、裁判においても、高次脳機能障害が残存することを前提とした和解ができました。
 
交通事故により頭部に加えられた衝撃が大きかったこと、脳挫傷や血種についてはっきりとした画像所見があったことが有利に働いたことは間違いないでしょう。
とはいえ、このように、「意識障害の継続」の要件をクリアできていない場合であっても、必ず負けるというわけではないのです。高次脳機能障害については、戦ってみなければ結果が分からない面があります。

示談交渉や訴訟になった場合の流れについては以下を参照ください。

 

 

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