本記事は以下の記事の続きになります。
4000kgのトラックが停止中の1000kgの乗用車に後方から衝突(追突)した例で考えます。
平坦な道を走行しているトラックが、前方に停車している乗用車に気がついて急ブレーキをかけましたが、間に合わず、スリップしながら衝突しました。
乗用車に衝突したトラックは運動量を失い減速しました。一方、停止(駐車)していた乗用車はトラックから運動量を与えられました。
その結果、乗用車とトラックの2台は、同じ速度となって接触したまま一定の距離をスリップ走行しながら、停止しました。
2台が一体となって動いた間にできたスリップ痕の長さから、衝突直後の2台の車両の速度は46km/hと計算できたとします。
なお、スリップ痕の長さから自動車の速度を求める方法については下記のリンク参照のこと
時速から秒速を求めるためには3.6で割ればいいので、46km/h=12.8m/sとなります。
しかし、衝突前のトラックの速度はすぐには分かりません。
衝突直前のトラックの速度を知るために、運動量保存則を使います。
衝突した車両の間では、運動量のやり取りが起こります。
運動量保存則によると、2台の車が衝突によって運動量のやり取りをしても、2台の車の運動量の合計は変わりません。
そこで、下記の図の流れのように考えます。
1.追突直後の各車両の速度がわかっている(12.8m/s)ので、まずは、衝突直後の乗用車の運動量と衝突直後のトラックの運動量を求めます。
2.この2つを合計すると衝突直後の2台の運動量の合計が出ます。
3.運動量保存則により、衝突の前後で2台の運動量の合計は変わりませんので、
「衝突直後の運動量の合計=衝突直前の2台の運動量の合計」となります。
4.衝突前は乗用車は停止していたので運動量はゼロです。
したがって、衝突直前の2台の運動量の合計は、衝突直前のトラック1台の運動量と等しいことになります。
実際に計算をしてみる
実際に計算をしてみます。
運動量の求め方は、運動量=質量×速度です。
①衝突直後の乗用車の運動量
=乗用車の重量×乗用車の速度
=1000kg×12.8m/s
=12800kg・m/s
②衝突直後のトラックの運動量
=トラックの重量×トラックの速度
=4000kg×12.8m/s
=51200kg・m/s
③衝突直後の乗用車とトラックの運動量の合計
=①と②の合計
=12800kg・m/s+51200kg・m/s
=64000kg・m/s
このようにして出した64000kg・m/sが、
衝突直後の乗用車とトラックの運動量の合計
=衝突直前の乗用車とトラックの運動量の合計
=衝突直前のトラックの運動量
となります。
衝突直前のトラックの運動量から、衝突直前のトラックの速度を導きましょう。
トラックの重量は4000kgであることがわかっています。
運動量=質量×速度という公式に従うと、
衝突直前のトラックの運動量
=トラックの重量×衝突直前のトラックの速度
です。
これにより、
衝突直前のトラックの速度
=衝突直前のトラックの運動量÷トラックの重量
=64000kg・m/s÷4000kg
=16m/s
となります。
秒速を時速に直すには3.6を掛ければいいので、
衝突直前のトラックの速度は
16m/s×3.6=57.6km/h
となります。
トラックは衝突の瞬間に、衝突直前の57.6km/hから衝突直後の46km/hへと一瞬で大きく減速したことがわかります。
なお、トラックが前方の乗用車を発見して衝突するまでの間にできたスリップ痕の長さがわかれば、トラックがブレーキをかける前の速度も計算できます。
運動量保存則の使い方について、比較的単純で分かりやすい例で説明してみました。
もうひとつ別な例で考えてみましょう。
下記の記事に続きます。
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