例えば、横断歩道を歩いていたところ、交差点に進入した車両のボンネットが右足に衝突し、路面にお尻から落ちて左手をついて頭を打ち倒れたとします。
事故後、救急車で搬送され病院で検査を受けたところ、脳には損傷がなく、右足や左手、腕、肩にも骨折がないと判断されました。
お尻にも打撲があるだけで骨折はありませんでした。
首、肩、背中、腰に強い痛みはあるものの、お医者さんからは、時間の経過とともに改善するはずだという見通しがつけられました。
こういったケースの場合、通常は時間とともに症状が改善をしていくことが多いです。しかし、常にそうなるとは限りません。例えば、ひと月経過しても、背中が痛くて寝返りが打てないという場合があります。
背中の痛みがなかなか治まらないという場合、背骨が骨折していることがあるのです。背骨の骨折は見過ごされやすいです。
上のケースで言えば、頭を打ち付けていますので、救急搬送先の病院の検査では、まず、脳に損傷があるかどうかが優先されます。脳の損傷を見逃すと、死に至る可能性があるからです。脳内に出血があるかどうか、CTによる撮影がなされます。
また、車に接触したり、路面に衝突するなどして外傷があると考えられる箇所(上のケースでは右足や左手、お尻など)について、骨折しているかどうかの確認をします。骨折が疑われる個所についてレントゲン撮影がなされます。
一方、背骨が折れているかどうかの確認は後回しにされる場合が多いです。交通事故で尻もちをつくなど、身体の上下方向で背骨に外力が加わると、背骨を構成する骨が折れる場合があります。下からの力で押しつぶされ、割れるイメージです。こういった背骨は、事故直後に撮影したレントゲンではわからない場合が多いです。しかし、(背中を強打しているなどの事情がない限り)背骨が折れているかどうかMRIを撮影して確認することは少ないのです。そのため、背骨の骨折が見過ごされてしまいます。
背骨が骨折すると、折れた個所が徐々につぶれ、時間をかけて変形をしていきます。そのため、背中の痛みがいつまでも続きます。事故から相当、期間が経過しても、背中の痛みで寝返りを打てないのです。
背中の痛みが取れず寝返りを打てない状態が続く場合、早めにMRIを取るべきです。早期にMRIを取ることで、背骨の骨折箇所にある出血が映るからです。出血が確認できれば、背骨の骨折が新しいものであると証明できます。新しい骨折であることが証明できれば、交通事故が原因であると証明しやすくなります。
背骨が骨折したまま時間が経過すると背骨は変形し、つぶれていきます。いわゆる圧迫骨折です。しかし、早期にMRIを取っていないと、圧迫骨折が交通事故によって生じたものなのか、あるいは、交通事故の前から背骨が変形していたのか、証明することができません。
したがって、圧迫骨折が後遺障害と認められず、後遺障害慰謝料や逸失利益を得ることができないのです。したがって、事故後しばらくしても背中の痛みが続き寝返りを打てないような場合、患者の方から病院に対して、MRIを撮影するようにお願いした方がベターです。
医師は交通事故により生じた賠償に対してあまり関心がないことが多々あります。医療資源の節約という見地から、MRIの撮影に対して消極的な傾向があります。やはり、患者の方からお願いをすべきでしょう。通院先にMRIがなければ、主治医に、MRI撮影ができる病院への紹介状を書いてもらいます。
交通事故により圧迫骨折が生じたことが証明できれば、賠償額は大幅に増えます。言い換えると、適切なタイミングでMRIの撮影をしてもらえなかった場合、圧迫骨折による痛みが長期間残り辛い思いをしているのに、適切な賠償額が得られなくなるのです。
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