1.相手の保険会社からの連絡がない場合の対処法
交通事故に遭った場合、通常は事故現場からすみやかに警察や保険会社に連絡をします。
加害者と被害者は、お互いに連絡先を交換します。
その後、しばらくして、加害者側保険会社の担当者から被害者に連絡があります。
怪我をしている場合、被害者は病院に通うことになります。
これが通常の流れです。
しかし、いつまで待っても、保険会社から被害者へ連絡がない場合があります。
どうすればいいのでしょうか。
結論から言ってしまうと、人身事故の場合には、速やかに病院へ行きましょう。その際は自分で治療費を立て替えるので健康保険を使います。
また、人身事故の場合には、加害者だけではなく、車の所有者にも請求できます。所有者を突き止めて請求をすれば、通常は所有者から任意保険会社に連絡がいきますので、任意保険会社とも連絡が取れるはずです。
2.病院に行きたいのに相手の保険会社から連絡がない
私の経験をもとに創作した具体例を使ってお話をします。
なお、プライバシーに配慮し、複数の事案を組み合わせるなどして、大きくアレンジをしています。以下の話に登場する人物は、実在するいかなる人物とも無関係です。
加害者が自分の自動車ではなく、知人から借りたままの車で事故を起こしたというケースです。
被害者は道路横断中、左折してきた車にはねられました。自動車が低速だったため、大きなケガは負いませんでしたが被害者は自動車のボンネットに跳ね上げられた後に地面に落ち、アスファルトの路面に背中を打ち付けました。
警察を呼び、その場で被害者と加害者は連絡先の交換をしました。
頭を打ったわけではなく、大きなケガもなさそうだったため、救急車での搬送はされず、被害者はそのまま自宅に帰りました。
しかし、帰宅後に被害者は背中がジンジンと痛み、肩や首に鈍痛を感じました。
被害者は、相手方の任意保険会社からの連絡を待ちました。
しかし、数日たっても連絡がありません。
被害者は加害者に電話をしました。
「保険会社からの連絡がないので困っている。保険会社に早く連絡するように言ってほしい。」と催促しました。
加害者は「すみません。もう少し待ってください。」というばかりです。
その後も、何日たっても保険会社からの連絡がありません。
再度加害者に連絡をすると、加害者からは「保険は使わずに私の負担で治療費を支払いたい。来月の給料日まで待ってほしい。」と言われ、一方的に電話を切られました。
被害者は、加害者ではなく、任意保険の契約者である自動車の所有者と直接話をしようと思い、所轄の警察署に行って加害車輛の所有者の名前と連絡先を問い合わせました。
しかし、警察では教えてくれません。
警察署の窓口で押し問答までしましたが、ダメでした。
3.仕方なく弁護士に相談~まずは病院へ
被害者は、ただでさえ事故のケガで首や肩が痛く頭も重い上、こういったやり取りを続けることに嫌気がさして弁護士のところに相談に行きました。
弁護士は、被害者に健康保険証を使って自費で病院に行くように勧めました。
確かに、被害者なのに自分で治療費を払って病院に行くのは理不尽だとも思えます。相手方保険会社からの連絡があるまでは病院に行かないという方もいます。
しかし、通院開始が遅いと、後遺障害を立証するうえで、不都合が生じる場合があります。
後々のことを考えると、相手方保険会社と連絡が取れない場合、健康保険を使って自費で病院に行った方がよいのです。
なお、健康保険を使って治療を受けたら保険者に届け出なくてはいけないことになっています。
届け出をしないと思わぬ不利益を受けることがあります。
治療を受けたら、国民健康保険の場合には自治体、健康保険の場合には「協会けんぽ」あるいは「健保組合」に連絡をしましょう。
なぜ、自費で治療費の立て替えをしてまで早く病院に行くべきなのでしょうか。
痛みやしびれなどの症状が残った場合でも、病院へ行くのが遅れてしまうと、後遺障害が認められなくなる可能性が高くなるからです。
むち打ちが後遺障害と認められるためには、交通事故後まもなくから痛みを訴えていたかどうかが見られます。
通院開始が遅いと、当初から痛みを訴えていたかどうかの記録が残らなくなります。
詳しくは下のリンクをご覧ください。
事故後すぐにMRIやレントゲンを撮っておかないと、後から骨折が発覚した場合、事故とは無関係だと反論されることがあります。
詳しくは下のリンクをご覧ください。
4.自動車の所有者を突き止める
弁護士は、加害者に電話をして、「自動車の所有者の連絡先を教えて欲しい。」と頼みました。
人身損害については、自賠法によって、加害者ではなく、車輛の所有者にも損害賠償を請求できます。
人身損害の賠償額は多額になることが多いので、自動車の所有者が契約する任意保険会社と連絡を取ることが大切です。
しかし、加害者はのらりくらりとするばかりで、自動車の所有者が誰なのか教えてくれません。
弁護士は、これ以上加害者と話しても意味がないと確信しました。
警察に電話をしても教えてもらえないことは明白でした。
弁護士は弁護士会を通じて運輸支局に照会をかけ、所有者の氏名、住所を突き止めました。
自動車の場合、車輛番号さえわかっていれば、弁護士会照会を使って相手方の住所や氏名を突き止めることが可能です。
車両番号は、交通事故証明書を取り寄せれば分かります。
なお、軽自動車の場合には軽自動車検査協会、原付バイクの場合は市町村の税務課に照会をかけます。
市町村の場合には、照会をかけても回答を拒否される場合があるようです。
弁護士は、所有者に以下のような趣旨の内容を記載した内容証明郵便を送りました。
「あなたの車が事故を起こしました。運転者は●●さんです。●●さんと話をしても話が全然進まないので、あなたと損害賠償の話がしたくて連絡をしました。あなたは自動車の所有者ですから、運行供用者として、事故についての損害賠償責任を負います。」
数日後、所有者から弁護士に連絡がありました。
そして、所有者が契約する任意保険会社に事故の対応をしてもらうことになりました。
加害者が車の所有者に対して、「俺が起こした事故だから、賠償の方は俺自身の力でけじめをつける」などと言ったので、所有者は事故の対応を加害者に任せきりにしていたのでした。
加害者も無責任ですが、所有者もかなり無責任です。
何はともあれ、無事、保険会社と連絡をとることができました。
被害者も安心して病院に通えるようになりました。
5.まとめ
最後にもう一度おさらいしましょう。
相手方保険会社と連絡が取れない場合でも、けがをしている以上は速やかに病院に行って、検査や治療を受けてください。
そして、人身事故の場合には、加害ドライバーよりもむしろ自動車の所有者と保険会社を交渉相手とすべきです。
そのためには所有者を突き止めることが効果的です。
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