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交差点の出会い頭の衝突事故での過失相殺で道路の広い狭いはどうやって決めるのか

1.交差点での過失割合(基本)

 下記の交差点で、緑の車を運転していたドライバーの過失割合は40、黒い車の過失割合は60となります。左方優先の原則により、左方から来た緑の車が黒い車よりも優先されるのです。この記事では、いずれの車も速度はほぼ同じとします

2.一方の道路が「明らかに広い」場合の過失割合

 ところが、次の図の場合には、一転して、黒い車が優先されます。間違い探しのようで恐縮ですが、いったい何が違うのでしょうか。

 後の例では、緑の車が走行する道路と比較して、黒い車の走行する道路が「明らかに広い」です。

 このような場合、緑の車の過失割合が70、黒い車の過失割合は30となり、「明らかに広い」道路を走行する黒い車両が優先になります。

 

3.自車が走行する道路が「明らかに広い」と認められる場合の影響

 前の例では、緑の車の過失割合が40にすぎなかったのに、後の例では、緑の車の過失割合は70になります。黒い車が走行する道路が「明らかに広い」かどうかによって、結果がまるで変わることがお分かりいただけたでしょうか。 

 仮に、緑の車のドライバーが死亡して、慰謝料、逸失利益等、トータルで2億円の損害が生じたとします。黒い車の走行車線が「明らかに広い」と認められた場合、緑の車のドライバーの相続人が受け取れる損害賠償額は、そうでない場合と比べて、6000万円も減少してしまうのです。

 したがって、黒い車が走行する道路が広いか狭いかは、大問題です。その上、微妙な判断を要求されるのです。

 

 4.「明らかに広い」かどうかの基準 

 道路が広いかどうかはそれぞれの道路幅を測って比べてみれば一目瞭然だろうと思われるかもしれません。しかし、「明らかに」広くなければいけないので、ちょっとばかり広いぐらいでは、「明らかに広い」ことにはならないのです。

 では、広さにどの程度の違いがあれば「明らかに広い」と言えるのでしょうか。

 実は、法律で明確な定めがあるわけではありません。裁判例などでも、明確な基準は示されていません。そのため、道路が「明らかに広い」かどうかをめぐり激しい争いになります。 

 裁判例などを分析すると「1.5倍程度」の差があるかどうかが「明らかに広い」かどうかの目安になると言われています。

5.どの地点から見て「明らかに広い」と判断するのか

 ただし、1.5倍の差があった場合でも、常に「明らかに広い」となるわけではありません。

 狭い道路を走行している車は、交差点に入る前に交差道路が「広い」と判断し、ブレーキをかけて徐行することが期待されています。したがって、ブレーキをかけて徐行できるように、交差点からある程度離れた手前から見て、交差道路が「広い」と判断できなければなりません。

6.「明らかに広い」かどうか判断しづらい場合

 例えば、上り坂を登り切った頂上が交差点となっているような場合には、交差点にかなり近づかないと、交差道路の広さが分からないこともあります。交差点に入るギリギリのところで交差道路が広いと気が付いても、ブレーキをかけて徐行するのには間にあいません。そのような場合には、一方の道路が「明らかに広い」交差点とは言えません。 

 また、交差点に隅切りがある場合も、交差点入り口が広く開きますので、交差道路の広さがわかりにくくなる場合があります。

 注)隅切りとは、道路の交差点で曲がり角を通りやすくするため、敷地の出隅を切り取ることです。

    隅切りがあるために交差道路の幅がよくわからなくなる場合も、一方の道路が「明らかに広い」交差点とは言えなくなります。 

 裁判例の中にも、「隅切りの結果,本件交差点が広々としていること等に鑑みると,本件交差点手前において,広狭の判別が一見して可能とは認め難い」としたものがあります(東京地方裁判所平成21年12月9日判決)。

 このように、一方の道路が明らかに広いかどうかの判断は、それほど簡単ではないのです。

示談交渉や訴訟になった場合の流れについては以下を参照ください。

 

 

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