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追突車の追突前の速度を求める その3

本記事は以下の記事の続きになります。

 

後方の乗用車が前方乗用車に追突した例

重量1000kgの乗用車が重量1000kgの乗用車に追突した例で考えます。

この記事の前の記事である「追突車の追突前の速度を求める その2」の例では、前方の車両は停止中でした。ここでは、どちらの車両も動いている例を考えます。前方車両が停止している場合よりも複雑になります。

後方の乗用車が前方をしっかり見ていなかったところ、前方を走行している乗用車に気がついてあわてて急ブレーキをかけましたが、間に合わず、スリップしながら追突しました。

前方乗用車に衝突した乗用車は運動量を失い減速しました。追突された乗用車は後方の乗用車から運動量を与えられました。

その結果、2台の乗用車は、同じ速度となって接触したまま一定の距離をスリップ走行しながら、停止しました。

2台が一体となって動いた間にできたスリップ痕の長さから、衝突直後の2台の車両の速度は、40km/hと計算できたとします。

衝突直前の各乗用車の速度を求めるために運動量保存則を使う

衝突直前の各乗用車の速度を知るために、運動量保存則を使います。

衝突した車両の間では、運動量のやり取りが起こります。

運動量保存則によると、2台の車が衝突によって運動量のやり取りをしても、2台の車の運動量の合計は変わりません。

この記事のひとつ前の記事である「追突車の追突前の速度を求める その2」の場合と同様、下記のように考えます。

1.追突直後の各乗用車の速度(40km/h)がわかっているので、まずは、衝突直の各乗用車の運動量の運動量を求めます。

2.この2つを合計すると衝突直の2台の運動量の合計が出ます。

3.運動量保存則により、衝突の前後で2台の運動量の合計は変わりませんので、

衝突直の運動量の合計=衝突直の2台の運動量の合計」となります。

ここまでは「追突車の追突前の速度を求める その2」と同じです。

追突前の車両の速度の出し方

しかし、そのあとが困ります。

前の記事の場合には前方の車両が停止していたので「運動量=0」として後方車両の運動量が出せたのですが、今回は前方乗用車は走行しており、走行速度も不明です。

しがたって、運動量保存則を使って衝突直前の2台の運動量の合計までは分かっても、各乗用車の運動量がぞれぞれどれだけだったのか、簡単に出すことができません。

佐藤家の兄弟の例でいえば、兄弟の最初の所持金の合計額は分かっても、兄弟それぞれの所持金がいくらずつであったのか不明であるということです。

衝突直後の2台の車両の速度が40km/hとなるための衝突直前の2台の車両の速度の組み合わせはいろいろと考えられます。

例えば、以下に2台の衝突前の速度の組み合わせの例を3つ挙げてみました。いずれの例でも、運動量保存則により、衝突後の2台の速度は時速40km/hとなります。

以上より、衝突車の速度は60km/hであったかもしれませんし、45km/hであったかもしれないことがわかりますね。運動量保存則だけでは、追突車単体の速度を出せないのです。

組み合わせ その1 前方乗用車20km/hと後方乗用車60km/h

組み合わせ その2 前方乗用車30km/hと後方乗用車50km/h

組み合わせ その3 前方乗用車35km/hと後方乗用車45km/h

運動量保存則を使っても、衝突前のそれぞれの乗用車の運動量がすぐに分からないのであれば、追突してきた乗用車の速度をどうやって出すのでしょうか。

そこで、運動量保存則だけに頼らず、両車両の衝突箇所の変形の程度も見ます。

上の「組み合わせ その1」では前後の車両の速度の差は40km/hですが、「組み合わせ その3」では速度の差は10km/hとなっています。したがって「組み合わせ その3」と比べ「組み合わせ その1」の方が、衝突箇所の変形の程度がずっと大きいことが直感的にも予想できますね。

「追突した自動車の変形量」から「追突した自動車と追突された自動車の速度差」を求める方法については、以下の記事で説明しているのでご覧ください

示談交渉や訴訟になった場合の流れについては以下を参照ください。

 

 

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