本記事は下記の「その1」からの続きです。
「その1」では、走行路面上の道路標示を目安にする方法を説明しました。
本記事では、道路標示などの目印に頼らずに、防犯カメラの映像から速度を算出する方法を説明します。
まずは、映像から複数枚の静止画を抽出し、重ね合わせます。
その結果、例えば、1/3秒の間に下の図のように自動車が移動したことが判明したとします。自動車の移動距離をどうやって求めればよいでしょうか?
2枚の静止画を重ね合わせたものをプリントアウトし、自動車がどのくらい(何センチ?)移動しているかを求めます。前輪の位置を基準に移動距離を求めてもよいですし、後輪の位置を基準にしてもよいです。
どちらを基準にしても長さは変わりません。下記の図のXとYの長さは同じです。
ここでは、写真上の移動距離Xが8cmであったことが判明したと仮定します。
次に、ホイールベースの長さを確認します。写真上、ホイールベースがどのぐらいの長さ(何センチ?)になっているかを測ります。
ここではAが4cmであったと仮定します。
以上により、移動距離8cmがホイールベース4cmの2倍となっていることがわかりました。
移動距離がホイールベースの2倍になっていることがわかったので、現実のホイールベースの数値に2を掛けることで、実際の移動距離がわかります。
仮に、現実の自動車のホイールベースの長さが2.8mだとしたら、現実の移動距離は2.8m×2=5.6mとなります。
※現実の自動車のホイールベースの長さはメーカーが発表していることが多いので、実際に測らなくても、メーカーの発表値をインターネット等で検索すれば判明します。
既に述べたように、移動する間に1/3秒が経過しています。
自動車は1/3秒の間に5.6m移動したことになりますので、
速度=距離÷時間の公式によって
速度(秒速)=5.6÷1/3=16.8m/s
となります。
秒速を時速に直すためには3.6をかけます。
自動車の速度は約60km/hであることがわかります。
ここまでは難しくないですね。
実際の防犯カメラの映像には遠近感がありパースがかかっている
理屈は以上の通りです。
しかし、現実の防犯カメラの映像の多くは平面的なものではなく、遠近感があります。
そのため、少し難しくなります。
まず、映像写真上の移動距離をどう取ればいいのか。
先ほどは前輪を基準にして移動距離を測っても(X)、後輪を基準にして移動距離を測っても(Y)、同じ長さになると言いました。しかし、下図のように遠近感が出ている場合には、そういうわけにはいきません。
下の図では、Xの方がYよりも若干長くなります。Xの方がYよりも、カメラに近い位置にあるからです。
そこで、XとYの平均を取って、移動距離とします。
平均とはいっても、XとYを「足して2で割る」わけではありません。
XとYを掛けた数値の平方根をとるのです(相乗平均)。
下の図を見てください。
我々になじみ深いのは相加平均の方ですね。
ここでは、相乗平均を使います。
ホイールベースも、下記の図のように、自動車が防犯カメラの近くまで来たとき(A)と、防犯カメラから離れているとき(B)では、長さが異なります。Aの方がBよりも長くなります。
したがって、ホイールベースについても、AとBの平均を取ります。
ここでも、相乗平均です。
したがって、現実の移動距離は、下の式のとおり計算することができます。
上記の式は、数学的には「複比の不変性」をベースにしています。私の手に余るので説明は省きます。
速度を求めるためには、「速度=移動距離÷時間」の公式に従い、移動距離を時間で割ります。
映像がない場合に走行車両の速度を求める方法については、下記の記事をご覧ください。
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