太もも部分には大きくて丈夫な骨があります。大腿骨です。大腿骨は、人体の中で最大の骨です。
交通事故の衝撃によって大腿骨が骨折する場合がありますが、どの程度の衝撃が加わると骨折するのかは、骨折箇所によります。
大腿骨の中で一番丈夫なのは中心部分、すなわち骨幹部です。よほど強い力が加わらない限り、そうそう簡単には折れません。大腿骨骨幹部骨折のように極めて強い外力が作用して生じた外傷を、高エネルギー外傷といいます。
骨頭や転子下も比較的丈夫で、これらの骨折は、若年者の交通外傷や高所からの転落などの高エネルギー外傷による場合が多いとされています。
一方、頚部や転子部のように細くなっている部分については、特に骨が弱くなっている高齢者の場合などは、転倒の衝撃程度でも折れる可能性があります。
例えば、次のような例を考えてみます。
歩行者が自転車に衝突され、転倒しました。
救急車で病院で搬送され、大腿骨の真ん中の部分、すなわち骨幹部が骨折していることが分かりました。
被害者は転倒したことや足に衝撃を受けたことは覚えていますが、相手が自分にどのように衝突するのか、詳細についてはあまり覚えていません。
自転車の運転者は、「自分はそれほど速度を出していなかったが、歩行者をひっかけるようにして接触したため、歩行者が転倒した。」と証言しています。
既に述べたように大腿骨の骨幹部は、極めて強い外力を加えられた場合しか折れません。自転車でひっかけて転倒したぐらいで折れることはありません。自転車の運転者の証言は誤りであると判断できます。
したがって、かなりのハイスピードで自転車が太ももを直撃したのだろうと判断することができます。
では、自転車はどの程度の速度が出ていたのでしょうか。
大腿骨骨幹部骨折は高エネルギー外傷です。では高エネルギー外傷とは、どのようなものでしょうか。病院前外傷救護ガイドラインに高エネルギー外傷が生じる状況について具体的な例を挙げています。例えば、6m以上の高さからの墜落、自動車・鉄道車両にはねられた歩行者・自転車、搭乗者が飛ばされた二輪車事故等々です。
ちなみに、6メートルの高さからの転落の衝撃は、時速40キロメートルでの衝突に匹敵します。
したがって、上の例でも、自転車は全速力か、それに近い速度で歩行者の太ももに衝突したのではないかと推定することができます。
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