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衝突した場合と衝突された場合の過失割合の違い
(明らかな先入り)

交差点でどちらの車が相手に衝突したのかは本当に重要?

次の図のように、一方の道路が明らかに広い交差点で、狭い道路から出てきた青い車と、広い道路から出てきた赤い車が出会い頭に衝突する事故があったとします。交差点の見通しは良くなかったとします。信号機はありません。

このような場合、狭い道路を走行していた青い車の基本過失割合が70、広い道路を走行していた赤い車の基本過失割合が30となります。

ところで、このようなケースでは、どちらの車の方が相手に衝突したのか、衝突された側が非常にこだわってしまう場合が多いです。

下の図を見てください。

どこが違うのかわかりますか?

ケース①では青い車が衝突された側です。ケース②では赤い車が衝突された側です。衝突された側が、「自分の方が先に交差点に入った。自分は相手にぶつけられたのだ。自分は悪くない」として、強い被害者意識を持つのです。

まず、実際に起きた事故がケース①なのかケース②なのかを判断しなければなりませんが、これは、赤い車と青い車、双方に残された損傷を見れば、容易に判断できます。

例えば、赤い車の前バンパーと、青い車の側面部が損傷をしていれば、ケース①であったことがわかります。

では、ケース①の場合とケース②の場合とで、赤い車の責任の重さ(過失割合)は変わってくるのでしょうか。

一見、ケース②の方では赤い車が青い車から衝突されているけれども、ケース①の方では赤い車の方が青い車に衝突しているので、ケース②と比べて、ケース①の方が赤い車の過失割合が大きくなってしまうように思えます。例えば、ケース②での赤い車の基本過失割合が30とすると、ケース①では赤い車の過失割合が増えて例えば、40になってしまうように思えます。しかし、そうはなりません。

結論をいうと、ケース①でもケース②でも、原則として、赤い車の基本過失割合は変わりません。どちらでも、基本過失割合は30のままです。

どちらの側が相手に衝突したのかで過失割合が変わらない理由

なぜ、ケース①で赤い車の過失割合が増えないのでしょうか。

それは、赤い車から見て、ケース①の場合であっても、交差点に入った後の回避のための行動をとることが困難な場合が多いと考えられるからです。

再度、ケース①を見てください。

確かにケース①の場合には、青い自動車が先に交差点に入り、赤い自動車は遅れて交差点に進入しています。しかし、交差点に青い車が入ってから赤い車が青い車に衝突するまでの時間は通常はかなり短かいため、衝突を避けるのが難しいことが多いのです。

人間が危険を察知して反応をするまでに、ゼロコンマ数秒から1秒弱の時間を必要とします。ブレーキペダルを踏んだりハンドル操作を開始してから車両の減速などの効果が生じるまでには、さらに時間がかかります。したがって、ケース①で、赤い車が、先に交差点に進入した青い車を見てから衝突するまでの短い時間内で衝突を回避することは難しいことが多いのです。

もっとも、衝突された側は、自分が衝突させたのではなく、相手が自分に衝突したことに強くこだわる傾向があります。衝突された側からすれば、「自分の方が先に交差点に入ったのだから、後から入った相手が『ブレーキを掛ける』とか『ハンドル操作で衝突を避ける』などの回避行動をとってくれれば衝突事故は起きなかった」と考えてしまうのでしょう。しかし、そのように考えるのは誤りです。

「明らかな先入り」の場合

ただし、例外的に、交差点に後から入った車の過失割合が増える場合があります。

たとえば、先に交差点に入った車の速度がかなり遅かったため、衝突するまでに、後から入った車に衝突を避ける時間的な余裕がかなりあったような場合です。

そのような場合、後から入った車は、先に交差点に入った車がいることに気がついた後にブレーキを踏んで減速をする等により衝突を容易に回避できるはずです。

このような場合、青い車が交差点に「明らかに先入り」していたことになります。後から交差点に入った赤い車は衝突を避けることができたのに不注意で衝突したことになりますので、過失割合が「30から40へ」と増えることになります。 

一時停止規制がある場合

では、次の図のように、一時停止の規制がなされている道路を走行する青い車が交差点に明らかに先入りをしている場合はどうでしょうか?

一時停止規制がある場合、交差点での出会い頭の基本過失割合は、一時停止規制がある道路を走行していた青い車が80、赤い車が20となります。

青い車が明らかに先入りしていた場合に、後から交差点に入ってきた赤い車の基本過失割合が「20から30へ」と増加するのでしょうか?

この場合は、先ほどの場合とは異なって、赤い車の基本過失割合が増えることはありません。

なぜなら、一時停止の規制がなされた道路を走行する車は、道路交通法43条後段により、他の車の進行を妨害してはならないと規定されているからです。青い車は、赤い車に急ブレーキや急ハンドルをさせてはいけない義務を負っているのです。したがって、青い車は、自分の車が先に交差点に入ることができる場合でも、赤い車が交差点を通過するまで停止して待たなければならないのです。

 こちらの記事もご参照ください。

 

示談交渉や訴訟になった場合の流れについては以下を参照ください。

 

 

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