本記事は、手足の関節の機能障害が2か所以上で生じた場合の後遺障害等級について述べます。
機能障害が1か所にとどまる場合については、下記の記事で説明していますので、ご参照ください。
上肢と下肢の三大関節
上肢の三大関節(肩・肘・手)と下肢の三大関節(股・膝・足)はそれぞれ以下の通りです。これらの関節のうち、2か所以上に機能障害が生じることがあります。
複数関節の機能障害は等級の併合で
上肢や下肢の三大関節に機能障害が複数ある場合には、原則として等級併合のルールによって、等級が決まります。
等級併合のルールは、下の通りです。複数の関節機能障害の場合には、ルール2とルール3を用います。
等級併合のルール
ルール1
5級以上の後遺障害が2以上ある場合には
重い後遺障害等級の3級上位の等級に繰上げる。
ルール2
8級以上の後遺障害が2以上ある場合には
重い後遺障害等級の2級上位の等級に繰上げる。
ルール3
13級以上の後遺障害が2以上ある場合には
重い後遺障害等級の1級上位の等級に繰上げる。
具体例で考えてみましょう。
具体例1
例えば、交通事故によって、片方の腕の3大関節のうち、2つの関節が全く動かなくなってしまったとします。
1つの関節が全く動かない場合の後遺障害等級は「8級」です。したがって2つの「8級」が併合していることになりますので、等級併合の「ルール2」によって、8級以上の後遺障害が2以上ある場合には重い後遺障害等級の2級上位の等級に繰上がりますから、「8級」が2級繰り上がり、「併合6級」となります。
具体例2
片方の足の3大関節のうち、1つの関節はほとんど動かなくなり、もう1つの関節は可動域が半分以下になってしまったとします。
1つの関節がほとんど動かなくなった場合の後遺障害等級は「8級」、可動域が半分以下になった場合の等級は「10級」です。この場合、等級併合の「ルール3」によって、重い「8級」が1級繰り上がり、「併合7級」となります。
以上のように、複数の関節に障害が残った場合、原則として等級併合のルールによりますが、併合のルールとは別に、別途、特別の定めもあります。下肢の定めの方が単純でわかりやすいので、下肢、上肢の順番で見ていきます。
1下肢の三大関節全ての用を廃した(ほとんど動かなくなった)場合
一方の下肢につき、三大関節すべてがほとんど動かせなくなった場合は「5級」と決められています。
両下肢の三大関節全ての用を廃した(ほとんど動かなくなった)場合
両方の下肢につき、三大関節すべてがほとんど動かせなくなった場合は「1級」と決められています。
1上肢の「三大関節+手の指」全ての用を廃した場合
一方の上肢につき、三大関節と手の指すべてについて用を廃した(ほとんど動かせなくなった)場合は「5級」と決められています。
下肢の場合には、三大関節すべてについて用を廃せば「5級」となりましたが、上肢の場合には三大関節に加えて手の指すべての用を廃さなければ「5級」になりません。
腕神経叢(わんしんけいそう)の完全麻痺
腕神経叢は、脊髄から手の抹消に向かう運動神経です。手に向かう複数の末梢神経が合流したり分岐しています。腕神経叢が完全麻痺になると、腕全体が動かせなくなります。
片方の腕神経叢の完全麻痺の場合には「5級」となります。三大関節と手指すべての用を廃した場合と同じ扱いです。
両上肢の「三大関節+手の指」全ての用を廃した場合
両方の上肢につき、三大関節と手の指すべてについて用を廃した(ほとんど動かせなくなった)場合は「1級」と決められています。
以下の記事もご参照ください。
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