1.高次脳機能障害と意識障害
高次脳機能障害が後遺障害と認められるための要件として、事故直後から意識障害が一定期間続くことが要求されています。脳の神経繊維が広い範囲にわたって損傷を受けることで発生する高次脳機能障害では、通常は受傷直後から意識障害が出ます。しかし、受傷直後には意識がはっきりしているが、だんだん意識レベルが落ちてきて意識障害が遅れて出てくることもあります。本記事では、意識障害が遅れて出る場合について述べます。
なお、意識障害が出たけれども、意識障害の継続期間が短かったような場合については、以下の記事でも触れていますので、ご参照ください。
2.意識障害が起こる理由
そもそも、頭部に強い衝撃を受けた場合、なぜ意識障害が起こるのでしょうか。人体には、意識を覚醒させるための仕組みが備わっています。下の図を見てください。
感覚神経から入ってきた刺激が、脳幹網様体というところに入ります。脳幹網様体が興奮し、視床を通って、大脳皮質に興奮を伝え、覚醒させるのです。覚醒をした大脳皮質が自分自身や自分の周囲を認識したり考えたりすることで、意識内容を保つことができるのです。
しかし、頭部に衝撃を受けて脳がゆがみ脳内の神経線維が広い範囲にわたって損傷する「びまん性軸索損傷」が起こると、下の図のように、①大脳皮質の機能が低下したり、②脳幹網様体や視床からの大脳皮質への連絡が絶たれたりします。また、外から加わった力が強い場合には、脳幹部が直接損傷します。
その結果、大脳皮質を覚醒させることができなくなり、意識障害が起こるのです。
3.意識障害が遅れて起こる理由
交通事故直後には意識がはっきりしていたのに、意識障害が事故後、遅れて起こる場合は、次のような経過をたどります。事故の衝撃によって脳の組織がグチャっとつぶれる、いわゆる脳挫傷になると、脳内に血種や浮腫が生じます。そして、頭がい骨の内部の限られたスペースを、血種や浮腫に占められてしまいます。その結果、頭がい骨の中で脳が圧迫されていきます。脳が圧迫されると、脳幹部も圧迫されたり本来の位置から押し出されたりして、ダメージを受けます。また、血種や浮腫による脳の圧迫によって、脳内の神経線維もダメージを受けます。その結果、脳を覚醒させる仕組みが働かなくなり、意識障害が起こるのです。
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