本記事は、下記の続きです。通院慰謝料について説明します。
次のような簡単なケースで説明します
被害者はサラリーマン。
数か月むち打ちの治療をして完治。
後遺障害(後遺症)は残らなかった。
ざっくりいうと、示談内容では、次の4つが重要です。
この中では、「通院慰謝料」を理解することがもっとも重要です。
慰謝料以外の3つについてはどのぐらいの額になるのか予想がつきやすいです。治療費や交通費は「実際にかかった費用のことだろうな」と見当がつきます。休業損害も「仕事を休んだことで収入が減少した分のことだろう」と見当がつきやすいです。
一方、通院慰謝料はどうでしょうか。どの程度の額になるのか、ぜんぜん見当がつかないのが普通でしょう。したがって、まずは慰謝料から説明します。
まずはこの表を見てください。
表を見てわかるのは、通院慰謝料の額は通院期間の長さによって決まるということです。
通院期間が長ければ慰謝料の額は上がります。
通院期間が1カ月ならば19万円。
2カ月になれば36万円になります。
しかし、通院を続ければどこまでも慰謝料が上がっていくというわけではありません。表をよく見れば分かりますが、通院期間に単純に比例しているわけではありません。
1カ月で19万円であれば、6カ月では19万円×6=114万円になりそうですが、表を見るとわかる通り、89万円となります。
通院期間が長くなっていくと、慰謝料の増額のペースが緩やかになっていきます。
通院期間が1か月の人がさらに追加で1か月通院して通院期間を2カ月にした場合には、ひと月で36-19=17(万円)増額します。
しかし、通院期間がすでに11カ月の人がさらに追加で1か月通院して通院期間を12カ月にした場合でも、119-117=2(万円)しか増額しないのです。
間違いやすいのですが、原則として通院慰謝料は「通院した回数」ではなく「通院した期間」によって決まります。ではここで確認です。以下のAさんとBさんとでは、慰謝料の額に違いは出るでしょうか。
Aさんの方がBさんより通院回数は2倍と多いのですが、通院期間はともに1か月で同じです。
したがって、慰謝料はAさん、Bさんともに19万円になります。
通院慰謝料は通院期間により決まるというルールには、例外があります。
次のようなケースでは、どうなるでしょうか。
通院日
2月1日、2月17日、3月11日、3月31日
(合計4回通院)
通院期間は2月1日~3月31日までの2か月です。したがって、表に従うと、通院慰謝料は36万円となりそうです。しかし、そうはなりません。
通院期間が長くても、通院ペースが不定期でまばらな場合には、下記の計算式に従って通院期間を求めます。
【計算式】
通院日数(回数)×3.5=通院期間
上の例では、通院回数は4回なので、
4(回数)×3.5=14
となります。
通院期間は14日間と計算できます。
通院期間がたまたま、「3カ月ぴったり」といった場合には表で一発で通院慰謝料が出るのですが、実際には、「通院期間が3か月と11日」といったように、端数が出るのが通常です。こういった場合、通院慰謝料はどのように計算するのでしょうか。
再度、表を見てみましょう。
通院期間が「3カ月と11日」の場合の通院慰謝料は、3か月の53万円よりは高額で、4カ月の67万円よりは低額になることは予想できます。
通院期間4カ月の場合の慰謝料「67万円」から、通院期間3か月の場合の慰謝料「53万円」を引くと「67-53=14万円」となります。
これを30で割ると、「通院期間3か月を超えて4カ月になるまでの間の1日あたりの通院慰謝料=4666.667円」を出すことができます。
1日あたりの通院慰謝料に端数の11日を掛けると、端数分の通院慰謝料の額が5万1333円であることが分かります。
したがって、通院期間が「3カ月と11日」の場合の通院慰謝料は、通院期間3か月の場合の慰謝料「53万円」に端数11日分の慰謝料5万1333円を足した58万1333円であることがわかります。
以上をまとめた計算式は次の通りです。
53万円+(67万円-53万円)÷30×14日=58万1333円
これで、むち打ちの通院慰謝料の話は終わりです。
もっとも、入院を伴う場合、むち打ちよりも重い怪我の場合には、さらに高額になりますが、この記事では割愛いたします。
示談では、①治療費、②交通費、③休業損害、④通院慰謝料が重要だといいました。本記事では、④を説明しました。
①~③については、以下の記事で説明します。
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