当初は骨折していないと診断されていたのに、後から発覚することが多い骨折です。
以下のような場合には「もしかしたら圧迫骨折かも?」と疑ってみましょう。
どのように生じるのか
尻もちや転倒により脊椎に力が加わり、脊椎の前方が骨折します。骨折した脊椎は、徐々につぶれていきます。主に、胸椎、それも、腰椎に近い箇所に発生します。
骨がつぶれることで、痛み(疼痛)が出ます。また、骨が変形をし、疲れやすくなります。
見逃されていることが多い隠れた後遺障害
事故直後に撮影したレントゲンでは正常に見え、わからない場合が多いです。事故から数か月かけて、脊椎がつぶれていきます。医師の診察を受けていても、見過ごされる場合も多いのです。
骨折がないことを前提にそのまま示談をしてしまうと、後から圧迫骨折が見つかっても、諦めるよりほかはありません。そうならないためにも、事故からしばらくたっても、背中に痛みがあるようなら、MRIを撮りましょう。
交通事故との因果関係が争われる
事故が原因なのか、もともと脊椎がつぶれていたのか、激しく争われることがあります。一般的には、交通事故によってつぶれたことを証明するためには、早期のMRIが決め手になると言われます。早期にMRIを撮れば、骨折した椎体(脊椎)内の出血や浮腫が映るからです。
早期に撮影したMRIで出血や浮腫が映っているということは、古い骨折ではなく、新鮮な骨折であることの証明になります。したがって、交通事故による骨折と推定されることになります。一方、交通事故から長期間経過してからMRIを撮った場合には、出血や浮腫が映りません。それでは、交通事故によって骨がつぶれたのか、あるいはもともとある古い骨折なのかが判明しません。
事故直後にレントゲンを撮っているか?
交通事故直後にレントゲン写真を撮っている場合も多いはずです。救急搬送された病院で事故当日に撮っていたり、通院初日にレントゲンを撮っている方もいます。したがって、初期のレントゲンと、後日撮った画像を比べれば、圧迫骨折が新しいものか古いものか分かる余地があります。初期に撮ったレントゲンで椎体がつぶれておらず、後日撮影したMRIで脊椎がつぶれていれば、脊椎の変形は交通事故によるものと考えられます。
証明に困る場合もある
困るのは、早期にMRIを撮っておらず、レントゲンもとっていない場合です。
事故の際に頭部や腕など、いたるところを怪我した人がいました。ほとんどの箇所は治癒したのですが、腰部に圧迫骨折が残ってしまった(疑いのある)人がいました。搬送先では、命にかかわる頭部のCT撮影や首のレントゲン撮影などが優先され、腰部のレントゲンを撮っていなかったのです。事故から半年後にMRI撮影もしましたが、事故から時間が経過していたため、椎体内の出血もはっきりしない状態でした。
このような場合には、腰部の圧迫骨折が古いものなのか事故によるものなのか、証明が困難になってしまいます。したがって、やはり、交通事故日から間を開けずに早期のMRI撮影をすることはとても重要です。
圧迫骨折が起きた場合に脊髄の損傷は起こるか
圧迫骨折は椎体(脊椎)の前の方がつぶれますが、後ろの方は無事なので、脊椎の安定性は損なわれません。したがって、脊椎が損傷しても脊髄には影響が出ないのが普通です。
圧迫骨折と似た骨折として破裂骨折があります。破裂骨折の場合には脊椎の前の方だけではなく後ろの方まで損傷します。脊髄は脊椎の後ろを通りますので、破裂骨折の場合には脊椎だけではなく脊髄も損傷する場合があります。また、破裂骨折では脊椎が不安定になりますので、不安定な脊椎が脊髄に干渉し、後から脊髄症状が出る場合もあります。
圧迫骨折や破裂骨折はオートバイ事故でしか起こらない?
保険会社の担当者の中には、被害者が自動車に乗っていた場合には圧迫骨折を容易に認めてくれない人もいます。圧迫骨折は被害者がオートバイに乗っていたり、歩行者の場合に起こるものと考えているからです。
確かに、圧迫骨折が生じるのはオートバイ事故の場合が多いとされていますが、現実には、自動車に乗っている場合でも圧迫骨折や破裂骨折は生じています。したがって、自動車事故であるからといって引き下がる必要はありません。
もっとも、衝突の際にどこをどのようにぶつけてケガをしたという「受傷機転」についての説明は必要になると思います。圧迫骨折が生じてもおかしくない「受傷機転」を説明できれば、圧迫骨折が交通事故によって生じたことが認められやすくなります。
圧迫骨折の後遺障害等級(変形障害)
下記の通りの等級になります。変形の程度に応じて等級が変わります。
6級 脊柱に著しい変形を残すもの。
8級 脊柱に中程度の変形を残すもの。
11級 脊柱に変形を残すもの。
なお、圧迫骨折の後遺障害は変形障害だけではありません。
運動に制限が残る場合には運動障害、頭部や体を支えられなくなった場合には荷重障害として、別途、後遺障害等級が認定されます。
変形障害、運動障害、過重障害のうち、複数の障害が認められる場合であっても、併合はせず、最も高い等級が認められます。
脊椎の変形だけではなく疼痛も残った場合は?
背骨の変形の他に疼痛が残る場合も多いですが、背骨の変形とは別に、疼痛についての後遺障害等級は認定されません。疼痛は脊椎の変形に伴うことが多い症状なので脊椎の変形とセットで扱われるからです。
もっとも、疼痛が残っている場合には、しっかりと「疼痛が残っていること」を認定してもらわなければいけません。後遺障害診断書にも「疼痛」「痛み」について主治医にしっかりと記載してもらう必要があります。
自賠責では疼痛があってもなくても11級なので同じ金額が支払われますが、任意保険との示談交渉や裁判においては、疼痛の有無で賠償額が変わってくる可能性があります。疼痛があることによって、今後の仕事(家事も含む)についての支障が出るので、損害(逸失利益)が大きくなるからです。
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