過失割合を決めるにあたって、しばしば、加害者が運転していた自動車がどの程度の速度を出していたのかが争点になります。
今までは、自動車が残したブレーキ痕の長さや車両の破損等の痕跡を基に、物理法則を使って自動車の速度を求める方法が主流でした。
しかし、最近は、いたるところに防犯カメラが設置されるようになりました。また、ドライブレコーダーも、安価になったことや煽り運転などの悪質運転についての衝撃的な報道によって、かなりの普及を見せています。
そのため、動画を用いて速度を出すケースが増えてきており、物理法則を用いた伝統的な方法を凌駕する勢いです。
本記事では、映像から自動車の速度を求める初歩的な方法を紹介します。
ドライブレコーダーの映像から
簡単な例で説明します。
自動車が一時停止の標識を無視して減速せずに交差点に進入したという事案で考えます。自動車にはドライブレコーダーが備えられており、交差点進入時の映像も残っていました。
ドライブレコーダーに限らず、動画というものは、パラパラ漫画のように1秒間に数枚から数十枚程度の静止画(写真)を続けて再生することで動いているように見せているにすぎません。したがって、静止画(写真)を抽出することが可能です。
下の写真は、ドライブレコーダーから抽出した3枚の連続した静止画です。
ドライブレコーダーは、1秒間に10枚の静止画を記録する設定だったとします。この場合、フレームレートが10(コマ/秒)となります。
したがって、写真①と写真②との時間的間隔は0.1秒です。写真②と写真③との時間的間隔も0.1秒です。そして、写真①と写真③の間隔は0.2秒となります。
この時の自動車の速度はどの程度出ていたのでしょうか。
すぐに気がつくのは、写真①の下端が「止まれ」の「れ」の文字の下と重なっています。写真②にはこれといった手掛かりが見られませんが、写真③の下端は「止まれ」の「ま」の文字の下と重なっています。
したがって、写真①を記録した時間から写真③を記録した時間(0.2秒)の間に、1文字分の距離、自動車が移動したことがわかります。
計測したところ、一文字分の距離が3.4mだったとします。
この自動車は、0.2秒の間に3.4m走行していたことになります。
速度を出すための公式は、おなじみのとおり「速度=距離÷時間」です。
したがって、速度(秒速)=3.4÷0.2=17mとなります。
時速は、3.6を掛けて、17×3.6=61.2(km/h)となります。
防犯カメラの画像を利用する場合も理屈は同じです。
防犯カメラの映像から静止画を抽出したところ、下のように連続した2枚の静止画が得られました。防犯カメラのフレームレートは3(コマ/秒)、すなわち、1秒間に3枚の静止画を記録していたとします。
したがって、下の2枚の静止画の間の時間的間隔は、1/3秒となります。
次に、2つの静止画の間の時間で自動車が移動した距離を求めます。自動車の先端部と道路標示の重なりに注目することで、移動距離がわかります。
このようにして距離と時間が出せれば、速度が出ます。
速度の公式は、すでに述べた通り、「速度=距離÷時間」です。
このケースでは、時間は「1/3秒」となりますので「速度=距離÷1/3」となります。
なお、「÷1/3」は「×3」と同じです。
今回紹介したケースでは、たまたま路面に道路標示という目印があったので、移動距離が簡単に判明したという幸運な例です。
とくに防犯カメラの場合には、設置した場所に目印にできるような道路標示がない場合があります。
そのような場合、どうすればいいのでしょう。
実は、道路標識に頼れないような場合でも、防犯カメラの映像から車両の速度を求める方法があります。
次の記事でご紹介します。
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