車両の傷を見れば、衝突時に加速していたのか減速していたのかがわかる ~その2~
なお、本記事は、「車両の傷を見れば、衝突時に加速していたのか減速していたのかがわかる その1」の続きです。
1.加害者は停止していたと言い張っている
具体的なケースで検討してみましょう。
下の図のように、赤い自動車の運転者が左方を十分に確認せずに道路に出たところ、左方から来た自転車が来たという状況を考えます。
赤い自動車の運転者は、自転車に気が付くと慌てて急ブレーキを踏みましたが、間に合わず自転車に接触し、転倒させてしまいました。
ところが、赤い自動車の運転者は、「道路に出る際に左方の確認を怠ってしまった」という自らの不注意を素直に認めませんでした。
被害者側は、どのように反論をすればいいのでしょうか。
赤い自動車の運転者が、次のような弁解をしています。
「左から自転車が来ることに気が付いたので、私は、自動車を停止させ、自転車が通り過ぎるのを待っていた。しかし、自転車の方が、私の車の前をかすめて倒れた。よそ見をしたまま自転車を走らせていたのだろう。」
どうすれば、この弁解を突き崩すことができるでしょうか。
2.車体の接触箇所の傷
赤い自動車の前部に、下の図のような傷が付いていました。
傷あとは、走行する自転車が車に残したものです。画面手前から見て、右から左へ向かってつけられました。
傷あとは、右から左へ流れる途中で、山のように上がっています。
これは、傷あとがつく途中で、自動車が急ブレーキをかけて前のめりになったということを意味しています。
接触箇所の地面からの高さは一定なので、自動車が前のめりになると、ボディの上の方に傷が付くからです。
したがって、赤い自動車は、自転車に接触した際に急ブレーキをかけたということがわかります。
3.自動車が停止していた場合の傷
もし、赤い自動車の運転者がいうように、赤い自動車が停止していたままであったとすれば、車体についた傷は、下の図のように、まっすぐなものになっていたはずです。
4.接触時に加速していた場合の傷
では、自動車の前面についた傷が、次のようなものであったらどうでしょうか。
傷あとは画面手前から見て、右から左に流れています。
左に流れるにしたがって、傷あとは下の方へカーブしています。
これは、接触した際に、アクセルを踏んで自動車を加速中だったことを示しています。
加速すると自動車の前が持ち上がるので、傷の位置は下がるのです。
自動車の運転者は、自転車に全く気が付かないままアクセルを踏んで加速し、衝突させたものと考えられます。
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