車両の衝突事故があった場合、運動量保存則を使うことで衝突前に追突車両がどのくらいの速度を出していたのかを求めることができる場合があります。
したがって、この記事では、運動量保存則について解説します。
そもそも、「運動量」とは何を言うのでしょう。
運動量といえば、日常的には、「体を動かす度合い」という意味で使うことが多いですね。例えば、「サッカーの長友選手は運動量が多い」という使い方をします。
しかし、ここでは、そういった日常的な意味の「運動量」ではなく、物理用語としての「運動量」の話をします。
物理用語としての運動量とは、ざっくり言うと、運動の勢いのことです。走行する車両は、「運動量」というものを持っています。
車両同士が衝突すると、それぞれの車両が影響を与え合い、各車両の運動の勢いが変化します。
車両の衝突がない場合には、ブレーキ痕などから、ブレーキをかける前の車両の速度が判明することが多いです。しかし、車両の衝突があった場合には、衝突によって各車両の運動の勢いが減ったり増えたりしますので、衝突前に各車両がどのぐらいの速度で走行していたのかがわかりにくくなるのです。
こういった場合、運動量保存則という理屈を知っておくと、衝突前の車両の速度が推定できる場合があります。
少し遠回りになりますが、たとえ話を使って説明します。
佐藤家という家庭があるとします。兄と弟の2人兄弟しかいない家庭です。
まずはケース1からです。
お兄さんの所持金が5万円、弟の所持金が2万円だったとします。二人の所持金の合計額は7万円です。
そこで、お兄さんが自分の財布から1万円を出して弟に渡したとします。お兄さんの財産が1万円減って4万円になりましたが、、弟の財産が1万円増えて3万円になっています。
お兄さんが弟に1万円を渡す前と後では、佐藤家全体での財産の合計額は7万円のまま変わりません。
つぎはケース2です。
お兄さんの所持金はなく、むしろ1万円の赤字があります。弟の全財産は1万円です。2人の所持金の合計は1万円-1万円でゼロです。
お兄さんが1万円の赤字になってしまったので、弟が1万円をお兄さんに渡しました。その結果、お兄さんの所持金は、赤字が消えてゼロになりました。
弟の所持金もゼロになりました。
弟がお兄さんに1万円を渡す前と後では、佐藤家全体での財産の合計額は0のまま変わりません。
どちらの場合も、佐藤家の財産の合計額は変わりません。佐藤家のメンバー同士でお金のやり取りをしても、佐藤家全体の財産の総額は変わりません。佐藤家の内部でお金が動いているだけだからです。
走行する車両は、「運動量(運動の勢い)」というものを持っています。2台の車両が衝突しあった時、衝突車両の間で、運動量のやり取りが生じます。
佐藤家の2人の間で所持金のやり取りがあったとしても2人の所持金の合計額が変わらないという話をしましたが、同様に、2台の車両の間で運動量のやり取りがあっても、2台の運動量の合計は変わらないのです。
これを運動量保存則と言います。
運動量は、「運動量=質量×速度」という公式で計算することができます。
車両の重量が大きいほど、そして、車両の速度が大きいほど、車両の運動の勢いが大きいことは直感的にも理解できますね。
さて、運動量保存則によって、次の関係が成り立ちます。
衝突前の2台の車両の運動量の合計
=衝突後の2台の車両の運動量の合計
もう少し具体的に言うと、
衝突前のA車の質量×速度+衝突前のB車の質量×速度
=衝突後のA車の質量×速度+衝突後のB車の質量×速度
となります。
具体例をみないと今一つイメージできませんね。
下の記事に続きます。
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